平成23年 御劔神社 夏季大祭 友井保存会 中南之町 振り返り

311日、未曽有の大地震が東北地方を襲った。阪神大震災を上回る被害で、多くの命が奪われた。実際に現場に足を運んだが、メディアから伝わるものと現実はあまりにもかけ離れていた。圧倒的な破壊の力が、空気となり身体全体に纏わりついてくる。「他人事ではない、何かしなければ」綺麗事ではないが、現実を目の当たりにすると、自然とそう思えてくる。
この場をかりて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞い申し上げます。

昨年の101日から平成23年度中南之町役員が新体制となり、平成24年度の曳き番に向けて動き出す。前実行委員長は引き続き実行委員長、前若頭が会計に、前神輿方補佐は若頭に、前太鼓方責任者は神輿方に、太鼓方補佐は太鼓方責任者にと、それぞれの立ち位置が変わった。

7月15日

ふとん太鼓組み上げ。大倉邸から金綱やふとん締めなどのふとん太鼓の飾りを神社裏の会議室に運び込む。例年、雨が心配されるが、今年はその心配はなかった。天気の心配はなかったが、段取りが悪過ぎた。
「次どないします?」「次どれです?」次々とくる質問。とりあえず大きい声を出して乗り切った。毎年やっていることが分からない。完全にテンパっていた。そんな太鼓方責任者を、中南之町の皆様、優しくフォローしていただきありがとうございました。感謝しています。例年なら徐々にテンションが上がってくるのだが、今年は不安な気持ちがパンパンに膨れ上がった前日の組み上げとなった。
 



7月16日 宵宮

朝から天気は良い。祭り日和である。午前6時前には目が覚めた。二日間の祭りの願人(太鼓を叩く人)の表を作る。完全に忘れていた。これがないと困る。最近は雰囲気で願人を決めていない。7時になり御旅所へ向かう。誰もいない。トンボを留めるバンドを買いにいかなくてはならない。昨夜の組み上げ時に、あると思っていたバンドが無かったためだ。若頭の軽トラに乗り込み中環沿いのシマノに行ったが、品切れのため八戸ノ里のコーナンプロに向かう。売っていた。良かった。ホッとした。その時、実行委員長から携帯が鳴る。「麦わら帽子買うてきて」そんな内容だった。祭り装束(ダボシャツ+ダボズボン+法被)の男二人が、午前7時のコーナンプロで麦わら帽子を探し回っている。今から考えるとかなり面白い光景だと思う。朝一から買い出し。長年祭りに出ているが、初めてのことである。祭りの神様がこの体たらくをご覧になられたら、激怒されそうである。麦わら帽子は売り切れだった。「あかんやん」そんな言葉が心に木霊する。御旅所に戻り、願人の表を冷蔵庫に貼り、皆を待つ。祭りが始まった。
御旅所で御神酒をいただき神社に向かう。それぞれの表情は明るい。笑顔である。これから過ごす祭りという非日常の二日間を楽しむ用意が出来ている。太鼓方責任者には笑顔がなかった。
御劔神社の境内に北之町・新町・西之町・中南之町の四台のふとん太鼓と二台の小太鼓が据え置かれている。二日間の祭礼の無事を祈願するため役員の御祓いが御社で行われる。その後、神主さんに各町ふとん太鼓を御祓いしていただき、宮出しが始まる。全ての御祓いが終わり、順に宮出しがされていく。

中南之町のふとん太鼓の宮出しの順番がきた。前が中南之町、後ろが他町でお宮さんから出ていく。担ぎ上げのタイミングや太鼓の音は四町がそれぞれのものを持っている。「ドンドンドンで上げてください。ドンドンドンで下げてください。」など訳の分からない説明(ビデオを確認すると擬音だらけの説明だった)を大きな声でした。中南之町の太鼓の音でふとん太鼓が上がる。担ぎのスタイルは保たれた。鳥居をくぐり、川筋を東向きに巡行する。用意されたコマにふとん太鼓を着座させ四町合同巡行が開始される。予定ではスムーズにいくはずであったが、その着座がなかなかスムーズにいかない。「なんで??」「なんで???」「なんでしっかり入らへんねん???」そんな焦燥の思いが込み上げてくる。ふとん太鼓を上げてもらったり下げてもらったりしてようやくコマに着座した。各町の皆様ご協力ありがとうございました。四町合同巡行は始まった。
四町合同巡行も無事?に終わり中南之町御旅所へ帰る。昼食をいただく。この二日間の食事は60人くらいで共にいただく。食事の準備、本当に感謝しています。ありがとうございます。小学校にあがる前の子供から還暦を遥か昔に迎えられた方まで年齢層も様々で。今更ながら不思議な集団である。
午後からはロープを引っ張る子供達による曳行である。今年初めての試みとして、四人の敲き子による担ぎを行う。その練習として午後一番の願人は子供四人で出発した。
曳行が無事に終わり夕食を御旅所でいただく。
 
数年前から宵宮宮入のスタイルが変わった。従来は宵宮本宮ともに四町が集まって宮入していたが、数年前から前半・後半に二町ずつ分かれて行われている。分かれて行うことにより、宮入後に自町でイベントができる。昨年、中南之町では宵宮宮入が前半であったため、宮入後に美園町に移動し美園町でふとん太鼓を担いだ。今年は後半の宮入である。夕食後から宮入までの時間を大倉邸前で担ぐ。広く宣伝したわけではないが、太鼓の音が響き始めると徐々にギャラリーが増えてくる。大倉邸前での担ぎを終え、御劔神社に向かう。
中南之町独自のイベントとして、宮入前に獅子舞の奉納がある。獅子舞はたかしさんの手作りによるものであるが、そのクオリティーの高さに驚かされる。獅子舞が始まった。この数分のために、毎年、青年団が祭り前から自主的に集まり何度も何度も練習している。遊びたい盛りの若者達が自分たちの時間をつかって練習していた。毎年、素晴らしい出来であるが、今年は本当に見事であった。
中南之町女子部による宮入が始まった。願人は実樹ちゃん、前にはゆかが乗っている。今年は練習の回数が少なかったが安定した担ぎであった。無事に中南之町女子部宮入が終わり、次は大太鼓の宮入である。前後に小田原提灯を持った町取・副町取、願人は隼人、屋根はヒデキ。女子部の先導があり、境内に東西の人垣ができる。ゆっくりとした太鼓の音で本殿前まで進む。宮入願人が初めての隼人は落ち着いており良かった。徐々に太鼓が早くなり、差し上げも決まった。宵宮の宮入は無事に終了した。
御劔神社から中之筋を通り御旅所へ向かう。大太鼓はそのままローソンの駐車場に入りコマを外す。小太鼓はニッサチェーン横でコマを外す。御旅所まで府道を担いでいく。数分前に宮入したばかりだが、落とすことなく御旅所に到着した。御旅所で軽い打ち上げの後、時計が午後十一時半を回った頃、本宮の御神輿渡御に伴う御霊移しのため、御劔神社に向かった。宵宮は終わった。




7月17日 本宮
午前中はロープをつないで子供達が曳行する。今年の日差しは昨年に比べればマシである。数々のハプニングを発生させた曳行を終え、昼食を御旅所でいただく。脇田さん、毎年ありがとうございます。
午後からは御神輿の渡御である。中南之町ふとん太鼓は御旅所に据え置かれる。二日間の祭りの中で太鼓方メンバーが唯一心休まる時間である。本当に今年はそう思った。
ここ数年、御神輿は本宮での渡御となっている。本宮の午後に四町の神輿方責任者と青年団が御劔神社で御祓いを受け、御神輿の渡御を行う。各町の御旅所で休憩をとり、引渡所で次の町に御神輿を預ける。
川筋から御神輿が中南之町御旅所に近づいてくる。御神輿は足が速いので声が聞こえると、すぐに目の前に迫ってくる。青年団を中心に今年も元気に担がれている。神様も喜んでおられると思う。
ニッサチェーンで御神輿を北之町に引き渡す。午後の最終は曳番町の御旅所である。今年の曳番町は西之町である。曳番の順は北之町・新町・西之町・中南之町である。中南之町の曳番は来年ということになる。オリンピックの年が中南之町の曳番の年となる。
夕食後、今年のイベントが行われる新道(弥刀駅前商店街)に向かう。四町合同で西(駅側)と東(天理教側)に分かれ交互に商店街を担いでいくという内容である。
待機場所である天理さん前に到着する。中南之町女子部の担ぎが始まる。畠中酒店から駅方向に担ぎ、肩を変え戻ってくることになっている。
コマを外す。台棒を伸ばす。ヨイトで所定の位置につく。準備完了。という予定であった。駅の方から北のふとん太鼓近づいてくる。イベントは完全に始まっていた。「これって俺らどの合図で開始なん?」「開始の連絡あった?」「向こうに太鼓を交わす場所あるん?」「北の太鼓向こうから来るけど、前に北のんあんのにどないやって俺ら出るん?」「ここ誰の仕切りになってるん?」「????????」若頭と目が合う。「あかん、聞きに行こ」若頭と太鼓方責任者は、誰かわからないこのイベントの責任者を捜しに駅の方に走り出した。
最初に発見した黒い法被の人に訊ねる。「開始の合図ってあるんですか?」「俺、分からんから向こうで聞いて」「…マジでか?」さらに二人は走る。次に発見したおそらく理解してるであろう黒い法被の人物に訊ねる。「合図はありませんが、前の打ち合わせどおりの流れで」若頭と太鼓方責任者は納得した。前の会議の時に配られた紙が全ての打ち合わせのようだった。俺たちは甘かった。二人はそう思った。急いで天理さん前に戻る。
中南之町のイベントは、なんとか始まった。隼人の音頭で担ぐ。隼人の声は良い。元気に駅に向かって中南之町ふとん太鼓は動き出した。
大倉さんに乗っていただく。大房も元気に揺れている。良い感じである。女子部も応援に来てくれる。祭りっぽい感じが増してくる。順調である。「ヨイト用意!」太鼓の合図でふとん太鼓が着地する。なんとか新道でのイベントは終わった。四町のふとん太鼓は、次のイベントの場所である御劔神社前に移動する。
中南之町の今年の趣向は子供達による振り付けありの担ぎである。可愛らしく化粧を施された四人の敲き子が青年団に肩車されて、ふとん太鼓に乗せられる。短い練習期間であったが、子供達は落ち着いた様子で太鼓を叩き、振り付けをこなしていく。子供達に緊張感は見られなかった。沿道からは、あまり祭りでは聞けない「かわいい!」などの賛美の声が聞こえた。今年初の試みは大成功だった。
各町の担ぎが終わり、中南之町の宮入の番がきた。願人はタカ、屋根は野村さん。前と後ろは町取副町取。ゆっくりゆっくり大きく太鼓が鳥居をくぐる。先持ち提灯を先頭に中南之町女子部が先導する。境内中央に太鼓台が進み、前が肩を入れ替える。前後左右が安定した良い担ぎになっている。徐々に太鼓が早くなってくる。大房の赤がよく見える。差し上げも綺麗に決まった。ふとん太鼓を境内に着座させる。
町取の挨拶が終わり、宮出しである。今年はヨイトから花棒の一気差しである。これまでやったことがない。宮入前よりも緊張した瞬間である。失敗したら危ない。本当に危ない。早太鼓が打たれる。通常の差し上げよりも一段と高い花棒差せは成功した。宮入直前の太鼓方からの雰囲気だけの要領を得ない説明で、よく上げてくれたと思う。本当に感謝した。そして思ったのが、やっぱり中南之町は本番に強い。鳥居をくぐったふとん太鼓は、神社前でも勢いを衰えさせなかった。鳥居の前を何度も往復しながら力強く大房を揺らしていた。
中南之町女子部の宮入が始まった。前にはミカちゃんが乗っている。安定した担ぎで境内に入る。祭りらしい華やかさを持っている。太鼓も安定している。綺麗に差し上げも決まった。部長の挨拶が終わり宮出しの準備をする。ヨイト、肩からの一気差しで小太鼓が上がる。今年は練習時間が大幅に減ったにも関わらずよくやったと思う。
各町ふとん太鼓の宮入が全て終了した。次は御神輿の宮入である。御神輿は西之町御旅所で鎮座していただいている。総代と巫女さんが、御神輿専用の白法被に着替えた各町の担ぎ手を先導する。御神輿が元気に境内に戻られる。今年は差し上げのまま馬をいれた。神社の灯りが全て消され、御霊移しが行われる。御霊にお戻りいただく。
本年度曳番町の西之町町取から中南之町町取に曳番町の幟が引き継がれる。今年の祭りは終わった。来年は中南之町曳番の年、楽しい祭りを目指して明日からまた始まる。

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